昨今の司法試験情勢では、「外国法なんて、したくても勉強する余裕がない」と思われがちですが、日本法の大部分は欧米等の制度を参考にして取り入れられました。従って、外国法を学ぶことは、日本法を別の角度から見ることになり、日本法に対する理解が一層深くなる効果もあります。また、比較法学は、紛争の防止および解決の様々なモデルを提示しますので、「解決の倉庫」を拡げ、豊かにします。そして、日本法の条文解釈だけでは得られない「より良い解決」を示唆します。
また、法律実務の面において、国際結婚と離婚、海外在住の親族の相続など、日本における家庭と個人の生活の国際化が進むに連れて、一般的な法律問題でも国境をまたがる事例が増えてきました。そのため、企業法務や渉外弁護士はもちろんですが、いわゆる「町の法律家」こそ、外国法に対する基礎知識が必要不可欠な時代になりました。
しかも、国境をまたがって活躍する法律家に求められるのは外国の法制度に関する教養だけでなく、むしろ他の国の弁護士等が置かれている「制度的コンテクスト」を理解し、彼らとうまく連携できるノウハウです。他の国と日本の制度の違いを理解した上で、依頼人が抱えている渉外問題を両国でも通用する解決策へ持ち込めるには高度なスキルが必要です。
本研究科は同志社大学の生い立ちの影響もあり、「国際性」を教育の基礎理念の一つとしてきました。そしてその理念を実行できる法律家を養成するため、外国法・比較法を重視し、アメリカ法、アジア法、EU法の授業を常設するとともに、海外インターンシップやゲストレクチャーや複数の外国のロースクールとの提携により、学生が在学中に、そして修了後も、外国法の理論と実務を経験できる機会の充実に努めてきました。