同志社大学法科大学院

教育体制

経済法

社会と法曹にとっての経済法の意義

 経済法は、D群(展開・先端科目Ⅰ)で経済法ⅠからⅢ、経済法総合演習までの8単位の講義が用意されています。また、E群(展開・選択科目Ⅱ)で競争法の国際比較2単位の講義を行っています。いずれも、司法試験選択科目としての経済法の中心となる独占禁止法を中心に、関連する周辺法律群にも目配りしながら授業を行います。
 近年の独占禁止法は、課徴金制度の拡充・強化によって違反行為による不利益がより大きなものとなっています。したがって、企業にとって、独占禁止法違反を起こさない態勢作りが極めて重要になっており、専門家としての弁護士の役割が大きくなっています。同時に、確約制度(調査対象企業が競争回復のための措置を確約し、公正取引委員会の認定を得て、違反との判断がなされることなく事件を終結させる制度)や調査協力減算制度(調査協力について減免申請者が公正取引委員会と合意し、それを着実に実施することにより課徴金の軽減率がより大きくなる制度)が導入され、違反に係る調査対象企業は、公正取引委員会とのコミュニケーションを取って、これら制度をうまく活用して最大限に不利益を小さくすることが求められます。この過程でも、弁護士の役割は重要です。違反事件だけではなく、企業結合審査においても、大型案件や複雑な案件が増え、競争に与える影響の分析や措置についても精緻化しており、公正取引委員会への届出と審査の過程において、当局としっかりと渡り合える人材のニーズと活躍の場が増えています。
 さらに、独占禁止法の認知度が高まる中で、企業間の契約を巡るトラブルでも独占禁止法に基づく主張がなされることが増えてきており、民事紛争に対応する上でも独占禁止法の知識が必要です。これは、弁護士のみならず裁判官にも独占禁止法の知識が求められることを意味します。検察官との関係では、犯則事件はコンスタントに起こる中で検察当局と公正取引委員会の連携の強化が図られておりますし、官製談合防止法の執行における捜査機関の役割も重要です。
 このように、法曹として、どのような立場に立つにしても、独占禁止法の理解・知識が求められる場面が多くなっており、これらの知識をもった人材の活躍の場も大きく広がっています。これは、独占禁止法に関与する法曹の数が大幅に増加していることに表れています。
 このような経済法をよく知る法曹の活躍の場は、更に広がっていくものと考えられます。

実務に基づいた理論と事例研究を組み合わせた講義

 経済法Ⅰ及びⅡでは、日本の法制度や重要論点の解説、公正取引委員会の運用実務の説明を行います。独占禁止法の重要論点のほとんどは、公正取引委員会での法運用実務をめぐって、発展、進化してきたものであり、重要判決・審決も、独占禁止法違反行為を抑止するための効率的運用という観点も配慮した上で、展開してきた歴史を有するものです。したがって、公正取引委員会での運用実務に即した事例の解説などにより、重要論点などへの理解を一層深めることができることになります。
 独占禁止法の条文は抽象的で、条文を一見しただけでは、何が規制されるのかが分かりにくい、経済学のしっかりとした素養がなければ解釈・運用できないのではないかという意見がありますが、一定の市場の状況で企業が採りやすい行動は何か、その行動が競争相手を初めとする他の企業や市場の状況にどう影響するかということについての、基本的なメカニズムを理解すれば、決して難しいものではありません。そのような理解が進むような授業を行っていきます。
 経済法Ⅲ及び経済法総合演習では、経済法Ⅰ及びⅡで獲得した知識を踏まえ、具体的事例への法適用上の論点、争点などにつき、受講者間でケースメソッドによる議論を行い、事案処理能力(論点抽出、要件分析整理、結論を導く方法など)の涵養を行います。
 さらに、国際的な調和の取組が進むとともに、企業活動のグローバル化と競争法の普及(今日では、130を超える国・地域が独占禁止法を運用しています。)の中で、海外の競争法についての知識を持つことのニーズは高まっていますし、日本の競争法を深く理解する上でも非常に有用です。競争法の国際比較では、このような観点も踏まえた授業を行っていきます。

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