A.世の中には様々な働き方がありますが、多くの人は企業や団体に雇われて働いています。そのような働き方は一般に「雇用」と呼ばれますが、労働法はそのような「雇用」に関わる法律です。「雇用」は契約に基づいて行われますので、「雇用」についても基本的に民法のルールが適用されますが、「雇用」がもつ特殊な性質のために、様々な特別ルールが形成されてきました。労働基準法や労働契約法、また、労働組合法といった法律がそれに当たります。労働法は、これらの法律の総称ということになります。
「雇用」がもつ特殊な性質については授業の中で説明しますが、その結果として、労働者の生命・健康、さらには人格等を保護する必要が生じます。また、多くの労働者にとって企業・団体から支払われる賃金が唯一の収入源ですから、それを確保する必要も生じます。これらの必要は、国民生活にとって切実なものですので、国は、単に企業・団体と働く人との間の契約関係を規律するルールを定めるだけでなく、行政的な取締りやルール違反に対する刑罰の賦課等も行っています。したがって、労働法は私法における民法の特別法にとどまらず、公法にも跨がる法分野ということになります。
A.多くの人が「雇用」という形で働いていますから、労働法は多くの国民にとって自分の日常にかかわる大事なルールということになります。多くの人に関わりますので、相談案件も多く、弁護士事務所の日常においても無縁ではいられないものです。相談に来る労働者は、切迫した状況にあることが多く、これに適切に対応することは、弁護士の社会的責務であると言えましょう。
また、企業法務という観点から見ましても、コンプライアンス意識の高まりの下、労働法の意義は大きくなっています。労働法令の遵守を怠りますと、たとえば違法残業事例を見てもわかりますように、金銭的なダメージが生じるだけでなく、社会的信用の低下や、引いては労働者の募集に支障を生じるなどの影響も生じます。労働法令は近年複雑化するとともに、改正も頻繁に行われています。知らないうちに違法状態になっていたり、他方、複雑な制度をうまく利用することでより柔軟な働き方を実現できたりします。こうした法令の動きに適切に対応することは企業法務にとって重要な課題であり、それをサポートすることは顧問会社に対する弁護士事務所の重要な責務の1つと言えます。
A.労働法については、労働法Ⅰ及びⅡ、そして労働法総合演習という3つの科目が開講されます。労働法Ⅰ及びⅡは、労働法全体の基本的理解を目的とした科目であり、労働法総合演習は、労働法に関する基本的理解を実践の場で確実に用いることができるようになることを目的とした科目です。
労働法Ⅰ及びⅡにおいては、『ケースブック労働法』(有斐閣)を用いて授業をします。判例については、『判例百選』などの判例集を用意しておくと便利でしょう。あらかじめ配布するレジュメには、設問が設けられていますので、それに答える形で予習し授業に臨むことが必要です。重要な部分についての理解を確認するための質疑応答を行います。
法科大学院に入学する前、すでに学部において労働法を学んだ人もいると思いますが、労働法Ⅰ及びⅡにおいては、労働法を学んだことのない人を前提とした授業を行います。もっとも、法曹養成を目的とした授業ですので、学部における労働法の授業とは一味違うものとなります。学部で労働法を学んだという人にも受講の価値はあるものと思います。
労働法総合演習においては、労働法Ⅰ及びⅡにおいて習得した理解を用いて、事例を解析する演習を行います。参加者は、あらかじめ事例を法的に分析して授業に臨むことが必要です。事例を分析して法的論点を見つけ出し、それに関する理論的な分析を行うことで、適切な解決を見いだす練習をします。