同志社大学法科大学院

教育体制

倒産法

倒産法とは

 債務者が期限の到来した債務を支払えない場合、あるいは支払うことが困難な場合、その債務者は倒産したといいます。倒産法は、このような債務者に対する権利行使や、このような債務者を救済するための手続について規律しており、破産法、民事再生法、会社更生法、特別清算(会社法第9章第2節)などが、これに該当します。
 本研究科では、司法試験の選択科目である倒産法に対応するものとして、「倒産法Ⅰ」(2単位)、「倒産法Ⅱ」(2単位)、「倒産法総合演習」(2単位)の3科目を用意して、破産法及び民事再生法につき講義を行なっています。
 本研究科で、倒産法Ⅰ、倒産法Ⅱ、倒産法総合演習は、基幹科目である民法、民事訴訟法の発展・展開分野と位置付けられています。民法等の実体法は民事上の諸権利について規定し、民事訴訟法はこのような権利の観念的な実現プロセスを規定します。これに対し、倒産法は、民事執行法など共に、民事上の諸権利の具体的な実現プロセスを規律しているからです。

極限状態における民事実体法の姿を考察

 民法や商法は実体法上の権利・義務を規定しています。そして、これらの権利はプライオリティー・ルール(優先順位)を前提としています。つまり、債務者が完全に弁済できない場合には、プライオリティーが上位の権利者から弁済を受け、下位の権利者は債務者が倒産したことによる損失を優先的に負担することになります。
 このプライオリティー・ルールは、債務者が倒産していないときには水面下に潜んでいますが(債務者が倒産していないときに適用される実体法を「平時実体法」といいます)、債務者が倒産すると、突如として顕在化します。つまり、債務者が倒産すると、実体法はその姿を一部ドラスティックに変えるのです(債務者が倒産したときに適用される実体法を「倒産実体法」といいます)。倒産実体法を学ぶことは、極限状態における民事実体法の姿を考察することでもあるわけです。公平を装う実体法の「冷酷」な側面が見えてきます!
 権利を実現する手続についても、似たような現象が起こります。平時には権利は民事執行により実現されますが、これは倒産時には集団的な権利実現手続に取って代わられます。破産手続が包括執行であると言われる所以です。

債務者を再生するプロセスを学ぶ

 倒産法は、債務者を再生する手続も規律しています。
 まず、破産法は、自然人の債務者(「個人債務者」)のために免責手続を設けており、債務者は、そこで、現在有している財産を破産財団として債権者の弁済に供する代わりに、残債務の免除を受けることができます。逆に、将来の収入から債務を一部弁済する代わりに、現在有している財産の保有と残債務の免除を認める手続もあります。
 企業の倒産の場合には、当該企業の事業をどのようにして継続するかが問題となります。債務者である企業が、自ら事業の問題点を明らかにし、改善策を提案し、それにより向上する収益を予測し、その収益に見合った額まで債務の免除を得るのが、基本形です(これを「自主再生型事業再生」といいます)。しかし、近年では、債務者の事業を別の法主体に移転し、事業再生はそこで(新しい経営陣の下で)行い、事業移転の対価で債権者にキャッシュで一部弁済を行い、残債務の免除を受ける手法が主流となっています(これを「スポンサー型事業再生」といいます)。これらの手続は、法的要素よりも、ビジネス的要素が優越しています。
 倒産法を学ぶということは、このようなプロセスを学ぶことでもあります。

科目の垣根を越えて倒産法の考え方を習得

 以上のように、倒産法は、平時実体法、倒産実体法、平時民事手続法、倒産民事手続法に、ビジネス的交渉と交渉のための武器(法的手段)が加わった、複合体です。倒産法を学ぶことは、科目の垣根を越えて倒産法の考え方を習得ことでもあります。倒産法Ⅰ・Ⅱと倒産法総合演習では、このような基本的な発想を学ぶことができます。
 このように説明すると、学生諸君の多くが「倒産法は重たそうなので敬遠しよう」と考えるだろうと思われます。しかし、そうでもないのです。平時実体法、倒産実体法、平時民事手続法、倒産民事手続法の組み合わせから分かるように、民法や民訴法学んだ諸君は、その知識の応用形として倒産法を学ぶことができます。そして、倒産実体法、倒産民事手続法を学ぶことにより、平時実体法、平時民事手続法の理解も更に深まることになります。

倒産法とは

 債務者が期限の到来した債務を支払えない場合、あるいは支払うことが困難な場合、その債務者は倒産したといいます。倒産法は、このような債務者に対する権利行使や、このような債務者を救済するための手続について規律しており、破産法、民事再生法、会社更生法、特別清算(会社法第9章第2節)などが、これに該当します。
 本研究科では、司法試験の選択科目である倒産法に対応するものとして、「倒産法Ⅰ」(2単位)、「倒産法Ⅱ」(2単位)、「倒産法総合演習」(2単位)の3科目を用意して、破産法及び民事再生法につき講義を行なっています。
 本研究科で、倒産法Ⅰ、倒産法Ⅱ、倒産法総合演習は、基幹科目である民法、民事訴訟法の発展・展開分野と位置付けられています。民法等の実体法は民事上の諸権利について規定し、民事訴訟法はこのような権利の観念的な実現プロセスを規定します。これに対し、倒産法は、民事執行法など共に、民事上の諸権利の具体的な実現プロセスを規律しているからです。

極限状態における民事実体法の姿を考察

 民法や商法は実体法上の権利・義務を規定しています。そして、これらの権利はプライオリティー・ルール(優先順位)を前提としています。つまり、債務者が完全に弁済できない場合には、プライオリティーが上位の権利者から弁済を受け、下位の権利者は債務者が倒産したことによる損失を優先的に負担することになります。
 このプライオリティー・ルールは、債務者が倒産していないときには水面下に潜んでいますが(債務者が倒産していないときに適用される実体法を「平時実体法」といいます)、債務者が倒産すると、突如として顕在化します。つまり、債務者が倒産すると、実体法はその姿を一部ドラスティックに変えるのです(債務者が倒産したときに適用される実体法を「倒産実体法」といいます)。倒産実体法を学ぶことは、極限状態における民事実体法の姿を考察することでもあるわけです。公平を装う実体法の「冷酷」な側面が見えてきます!
 権利を実現する手続についても、似たような現象が起こります。平時には権利は民事執行により実現されますが、これは倒産時には集団的な権利実現手続に取って代わられます。破産手続が包括執行であると言われる所以です。

債務者を再生するプロセスを学ぶ

 倒産法は、債務者を再生する手続も規律しています。
 まず、破産法は、自然人の債務者(「個人債務者」)のために免責手続を設けており、債務者は、そこで、現在有している財産を破産財団として債権者の弁済に供する代わりに、残債務の免除を受けることができます。逆に、将来の収入から債務を一部弁済する代わりに、現在有している財産の保有と残債務の免除を認める手続もあります。
 企業の倒産の場合には、当該企業の事業をどのようにして継続するかが問題となります。債務者である企業が、自ら事業の問題点を明らかにし、改善策を提案し、それにより向上する収益を予測し、その収益に見合った額まで債務の免除を得るのが、基本形です(これを「自主再生型事業再生」といいます)。しかし、近年では、債務者の事業を別の法主体に移転し、事業再生はそこで(新しい経営陣の下で)行い、事業移転の対価で債権者にキャッシュで一部弁済を行い、残債務の免除を受ける手法が主流となっています(これを「スポンサー型事業再生」といいます)。これらの手続は、法的要素よりも、ビジネス的要素が優越しています。
 倒産法を学ぶということは、このようなプロセスを学ぶことでもあります。

科目の垣根を越えて倒産法の考え方を習得

 以上のように、倒産法は、平時実体法、倒産実体法、平時民事手続法、倒産民事手続法に、ビジネス的交渉と交渉のための武器(法的手段)が加わった、複合体です。倒産法を学ぶことは、科目の垣根を越えて倒産法の考え方を習得ことでもあります。倒産法Ⅰ・Ⅱと倒産法総合演習では、このような基本的な発想を学ぶことができます。
 このように説明すると、学生諸君の多くが「倒産法は重たそうなので敬遠しよう」と考えるだろうと思われます。しかし、そうでもないのです。平時実体法、倒産実体法、平時民事手続法、倒産民事手続法の組み合わせから分かるように、民法や民訴法学んだ諸君は、その知識の応用形として倒産法を学ぶことができます。そして、倒産実体法、倒産民事手続法を学ぶことにより、平時実体法、平時民事手続法の理解も更に深まることになります。

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