プロフィールは、こちら
現在、1Lの刑法講義Ⅱ(各論)、2Lの刑法演習Ⅰ、Ⅱ、刑法特講Ⅱ、3Lの刑法総合演習を担当しています。
刑法講義Ⅱ(各論)では、刑法典に規定されている各犯罪の構成要件および処罰範囲について検討し,刑法各論の基本的知識を習得し,刑法各論上の基本的な論点について問題の所在,判例・学説の内容を踏まえた上で,具体的な事例において各犯罪の成立要件を充足するかどうかを適切に判断する能力、複眼的に問題を考察できる能力を身につけ、2年次以降に配当されている「刑法演習Ⅰ・Ⅱ」等の科目に対応できる基礎的能力の養成をめざします。そこで、刑法各論に固有の問題ばかりでなく,刑法総論との関連を意識しながら講義を進めるようにしています。刑法各論に関する重要な事項を効率的に学修する必要があるため,基本的に講義形式が中心となりますが,可能な範囲で設例・設問を用いた双方向的授業形式を取り入れることにしています。
刑法演習では,刑法総論で習得した基礎学力を前提として、その応用力を磨き,さらに将来の刑事司法実務に対応できる基礎的な能力の養成をめざしています。刑法においては,犯罪成立の一般原則や各犯罪成立要素の有機的な関連について,体系的に認識すると同時に,具体的な犯罪成立要件のあてはめの判断を行わなければ,抽象論や観念論に終始し,実務への架橋となり得ません。そこで,刑法演習では,刑法総論・各論の重要な論点について,具体的な重要判例や判例を基にして若干修正した事例の中から,論点をあげて犯罪の成立要件を検討するケース・スタディを質疑応答形式で行います。ケース・スタディを通して,刑法総論・各論の重要な論点について実践的な問題解決を行える実力の養成を図り、問題の所在や主な判例・学説の内容の正確な理解を前提として,具体的な事例において犯罪論の体系に従い事実関係に即して適切に犯罪の成否を判断する能力を身につけることができると考えています。
刑法特講Ⅱでは、刑法各論の基礎について復習が必要な人を対象として、刑法各論上の重要問題を順次取り上げ,「刑法演習Ⅱ」では十分に扱うことのできない基本的な事項や学説の内容について検討しています。事前に問題を提示し、検討してもらったうえで、検討すべき論点について、質疑応答、受講者間の議論を通じて、刑法各論上の重要論点を中心に問題の所在や主な判例・学説の内容を踏まえた上で,具体的事例において,論点を見出し,規範を立て、あてはめを行い,各犯罪の成立要件を充足するかどうかを事実関係に即して適切に判断する能力を身に付けることをめざしています。
刑法総合演習では、刑法関係の演習の総まとめとして,長文の事例問題を素材にケース・スタディを行い,現実の実務に対応可能な問題発見能力及び問題処理能力の養成をめざしています。受講生には,事例問題の解答をレポートとして事前に提出してもらい、授業では,レポートに講評を加えながら,受講生との質疑応答を通じて事例問題の検討を行います。これまでに養った基礎的な学力をもとに,具体的な事例を事実関係に即して適切に解決し,刑事の実務に対応可能な問題発見能力及び問題処理能力を習得することを目標にしています。
大学院入学以来、刑事責任論、特に故意と違法性の意識の可能性に関して研究してきました。刑事責任において故意と違法性の意識の可能性が果たす意味という理論的な問題、刑法の解釈としてこの問題をどのように考えるべきかという解釈論上の問題、違法性の錯誤を理由として犯罪の成立が否定される場合があるのかという実際上の問題を解決するために研究を進めてきました。
また、現代社会において刑法が果たす役割についても研究していきたいと思っています。たとえば、医療、交通、経済取引の分野において刑法・刑事制裁は必要でしょうか。必要であるとすれば、どのような行為について、どのような刑事制裁が必要なのでしょうか。その一つの側面として、個別行為責任を原則とする刑法において、法人企業の特殊性をどこまで考慮することができるのかという問題について、新たに企業処罰立法を導入しようとしている外国の議論状況との比較を通じて研究を進めています。
これまでを振り返りますと、「人生、どこに転機があるかわからないものだ」ということを実感しています。大学進学、法律学、その中でも刑法学との出会い、先輩、恩師との出会い、忘れられない1曲の音楽、1枚の絵画、数多くの「偶然の出会い」が私の人生を豊かにしてくれています。人が一生のうちに出会うことができることには限りがあります。だからこそ、偶然に出会うことのできたすばらしい友人、学問は、かけがえのないものです。皆さんにとって、刑法との出会いが、かけがえのない「偶然の出会い」となることを願っています。