本研究科は、質の高い法律家を養成するために、設置以来一貫して、基幹科目の演習・総合演習を1クラス25名の少人数で編成し、双方向の対話・議論を重視した教育に磨きをかけてきました。事実の中から法的問題を発見する能力、発見した問題点の手がかりをつなぎ合わせて法的判断を下す思考のフローを整理する能力、論点あるいは事案に対する法的判断を言語により正当化し、あり得べき反論に適切に応答する能力を、法科大学院の限られた在学期間内に修得させるためには、確かな基礎知識を基にして、理論、実務の両面から議論を重ねて質疑応答の質を高めることが最善の方法であると考えています。
法律家養成の質の確保を求める中央教育審議会法科大学院特別部会の報告においては、法科大学院修了生の基礎的学力を一層向上させる必要があること、法的文書作成能力を鍛錬する必要があることなどが指摘されています。本研究科においては、こうした指摘を真摯に受け止めて、法律家養成機関に対する社会の負託に応えるため、学生定員を150名から120名に削減しました。これに併せて、「少人数教育の進化」、「文書作成指導の充実」を柱として教育態勢を見直し、併せて、厳格な成績評価を着実に実施することにより、本研究科における法律家養成の質の確保、向上に努めていきます。
本研究科における法律家としての基礎学力の錬成は、基幹科目(C群科目)に配置した演習、総合演習科目における双方向の対話型授業を基軸として行っています。2010年度より学年毎の学生定員を120名とすることに併せて、従来、1クラス25名として編成してきた演習、総合演習科目は、1クラス20名を標準として編成します。
2010年度より、実務関連科目(H群科目)に、「法律実務演習」と題する科目を新設します。新カリキュラムにおける「法律文書作成」では、実務基礎科目(B群科目)において学んだ要件事実、事実認定を基に、訴状、起訴状、答弁書などの準備書面を起案するための基礎的なトレーニングを行います。他方、新設する「法律実務演習」では、要件事実、事実認定の基礎事項の理解、法律文書起案の基本スキルを前提として、実務の即戦力につながる文書作成の応用力の指導を行います。
文書作成能力の指導は、法律文書の作成能力養成を直接の目的とする上記科目に限られるものではありません。基幹科目の演習、総合演習などにおいても、FD委員会の定める指針に従い、法律家として通用する文書を作成する能力の指導に力を注いでいます。