第2回法科大学院講演会 第1回法学部講演会開催
5月14日、金山直樹慶應義塾大学法科大学院教授をお招きし、本学田井義信法科大学院教授の司会により開催された。
講演会では、フランス破毀院判決2件(契約Aが前提とする取引Bが不奏功に終わったとき、契約Aの効力自体が否定されうるというもの)と、契約の前提事情を契約効力の判断材料とした日本の最高裁判例2件が取りあげられた。これら日仏両国の判例には、契約における具体的正義の実現という共通項がある。一国の裁判所は当然に自国の理論・概念装置に依拠せざるをえない。このとき理論化を任務とする学説は、裁判所がみずからの結論を正義に適うものとみ、果敢に挑戦する姿勢をこそ受け止める必要がある。同様に法学生も、判決の裏側に潜む正義感覚への洞察力を養いうるか否かが決定的である。全体を通じて聴衆の耳に残ったのは、「法理論には『哲学』が必要である」とのお言葉であった。本講演会の副題とて、たんなる日仏法比較にとどまらない所以である。
フランス民法学を比較素材に研究を展開されている金山教授からは、長年のご研究に基づく貴重なメッセージをいただいた。心からお礼申しあげたい。なお、金山教授は本学大学院(博士課程前期課程)のご出身であり、本学学生・教員以外にも、故金山正信教授ゼミ出身者も多数駆けつけてくださったほか、学生からは慶應義塾大学法科大学院の現状に関する質問の飛び出すなど、終始なごやかな雰囲気で進められた。