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教員からのメッセージ


横田光平 教授
1.なぜ行政法は分からないのか
   法科大学院で授業をしていて実感することですが、法律科目の中でも特に行政法に苦手意識を持つ人が少なくないようです。他の法律科目の成績は優秀なのに、行政法だけはどうも、という話を学生のみなさんから聞くことがよくあります。その逆に行政法だけはよく理解しているという学生に出会うことも時々あり、どうして他の法律科目の成績はそれほど芳しくないのだろうと不思議に思うこともあります。
   個人的な感想ですが、どうやら行政法と他の法律科目では、求められる能力に若干の違いがあるのではないかと考え始めています。司法試験に限っていえば、行政法については他の法律科目よりも総合的な視点が強く求められているように思います。法科大学院の定期試験でも、当該事例において問われている論点が何かを見抜くことこそが重要であるにもかかわらず、最初の出発点を見誤って全く見当違いの内容を延々と書き連ねる答案が後を絶ちません。このような場合、書いた本人は、試験後に個別講評を求めない限り、なぜ自分の成績が良くないのか分からないままです。なぜ行政法が分からないのかが分からないというのが、行政法が分からないという人の正直な感想ではないでしょうか。
2.2段階のハードル
   個人的な経験ですが、私自身も初学者の頃、行政法総論がよく分からず、このままでは単位が取れないかもしれないと焦って行政法総論だけを集中的に勉強したことから今に至っています。行政法研究者には似たような経験をした人が少なくないようです。1回1回の授業で学ぶことは分かるのですが、前回の授業と今日の授業、あるいは今日の授業と次回の授業の内容がどのような関係に立つのか、今日の授業が行政法全体の中でどのように位置づけられるのか、初学者の時は全くみえていませんでした。
   実は行政法総論は全体を1つの流れに沿って説明することができません。かつては行政行為を中心とする3段階モデルを基軸とした理論が構築されていましたが、行政過程論の登場以降、多様な様相の行政過程を直截に捉えるため、複数の流れの組み合わせによって説明がなされるようになりました。つまり行政法の諸論点は相互に多様な形で関連しあっており、教科書でいえば、執筆者によってそのうちのどの関連を中心に行政法を理解するかが異なり、それによって教科書の構成が変わるわけですが、目次の位置が互いに離れているからと言ってそれぞれの論点が別々に捉えられるわけではありません。
   そこで法科大学院の授業では、どのような事例についても常に行政法全体を頭に置いて考えることを意識するよう強調し、行政法を複眼的に見ることができるよう、第2、第3の関連にも注意を向けることによって、最初の出発点から間違えて大失敗することができる限り少なくなるような授業を心がけています。
   もっとも、行政法に習熟する上でのハードルはもう一つあります。これも私の個人的な経験ですが、大学院に進学した段階で判例研究会に参加した際、初めて目にした法律の仕組みを前に、それまで学んだ教科書の知識では対応できず、「行政法ってこういう法律科目だったのか」と愕然とした記憶があります。まずは当該事案で問題となっている個別法律の条文の複雑な構造を正確に捉えることが求められるのであり、それができて初めて教科書の知識が生きてくるということも法科大学院で学ぶことですが、その方法は通常の教科書には書いてありません。行政法研究者は個別法律の解釈の経験を重ねて「職人技」を身につけていきますが、それまで見たこともない法律の仕組みを読み取る「技」を言語化することは容易ではありません。結局、学生のみなさんが多くの事例と向き合って自分の頭で考えることを繰り返しながら経験値を高めていくしかないのです。
   そこで、法科大学院の授業では、学生1人1人が自分の頭で考える経験を積んでいくために、事例問題のレポート提出を求め、これを添削して授業の教材としています。その際、言語化できる「技」は折にふれて伝えていくことで、少しでも各人の経験値をより効果的に高めていくためのサポートができたらと考えています。
3.行政法のカリキュラム
   このように行政法においては1冊の教科書を一通り勉強しただけでは対応できない部分が多く、このような科目の特性を十分に理解して学習を進めていくことが重要です。学習のコツをつかみさえすれば、司法試験レヴェルでは行政法は学生のみなさんが思っているよりはるかに分かりやすい科目であり、どのような法律に係る事案が出題されても一定水準以上の成績を残せるはずだと私は考えています。
   同志社大学法科大学院の行政法カリキュラムにおいては、①行政法総論(1L必修)、②行政法基礎演習(2L選択)、③行政法演習Ⅰ(2L必修)、④行政法演習Ⅱ(3L必修)、⑤行政法総合演習(3L選択)を用意しています。①~③では行政法の教科書に書いてあることや判例を中心に学び、④⑤では事例問題の検討を行い、教科書や判例の復習を兼ねつつ、教科書には書いていない重要な視点、「技」の習得を目指します。
   多くの人が苦手としている行政法の考え方を自分のものにすることができれば、こんなに心強いことはありません。同志社大学法科大学院で行政法を得意科目にしてみませんか。
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