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教員からのメッセージ


竹中 勲 教授
憲法学・法科大学院と国民のための司法の実現
1=東京地裁平成25年3月14日判決(成年被後見人の選挙権を制限する法律規定〔公職選挙法11条1項1号〕が憲法15条等に違反するとする法令違憲判決)
  2013(平成25)年5月3日(憲法記念日)に開催された上記判決に関する集会にコメンテーターとして参加する機会があった(憲法21条の表現の自由・集会の自由)。
  本集会では、上記の東京地裁違憲判決の内容および判決後の法改正の動きに関する報告、類似の京都地裁憲法訴訟の現況報告、さらに、弁護士会、司法書士会、育成会、精神保健福祉会などからの報告が行われ、「判断能力が十分でない成年者の権利擁護・法的サービスのあり方・基本的人権の保障のあり方」などにつき論議が行われた。
  なお、この福祉関連・成年後見分野などは法科大学院卒業者がより一層の貢献を行いうる職域の一つであることが留意されるべきであろう。
2=国民のための司法の実現と「国民にわかりやすい判決文」
  2001年の司法制度改革審議会意見書を受けて、司法制度改革推進本部顧問会議は、国民のための司法の実現に向け、21世紀のあるべき司法として「3つのFの司法(Familiar、Fair、Fast)」をアピールした。国民にわかりやすい(Familiar)司法を実現するには、何よりも「国民にわかりやすい判決文」であることが求められる。2013年の上記東京地裁違憲判決は、このような「国民にわかりやすい(言葉を用いて国民に語りかける)判決文」としても、きわめて注目に値するものといえよう。同判決は、次のように述べている。
  「そもそも後見開始の審判を受け、成年被後見人になった者であっても、我が国の『国民』であることは当然である。憲法が、我が国民の選挙権を、国民主権の原理に基づく議会制民主主義の根幹として位置付け、国民の政治への参加の機会を保障する基本的権利として国民の固有の権利として保障しているのは、自らが自らを統治するという民主主義の根本理念を実現するために、様々な境遇にある国民が、この国がどんなふうになったらいいか、どんな施策がされたら自分たちは幸せかなどについての意見を持ち、それを選挙権行使を通じて国政に届けることこそが、議会制民主主義の根幹であり生命線であるからにほかならない。
  我が国の国民には、望まざるにも関わらず障害を持って生まれた者、不慮の事故や病によって障害を持つに至った者、老化という自然的な生理現象に伴って判断能力が低下している者など様々なハンディキャップを負う者が多数存在する。そのような国民も、本来、我が国の主権者として自己統治を行う主体であることはいうまでもないことであって、そのような国民から選挙権を奪うのは、まさに自己統治を行うべき民主主義国家におけるプレイヤーとして不適格であるとして、主権者たる地位を事実上剝奪することにほかならないのである。したがって、そのようなことが憲法上許されるのは、それをすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難であると認められる『やむを得ない事由』があるという極めて例外的な場合に限られると解すべきことは、国民主権や議会制民主主義の理念を標榜する我が憲法の解釈としてけだし当然のことであって、そのような『やむを得ない事由』がない限り、様々なハンディキャップを負った者の意見が、選挙権の行使を通じて国政に届けられることが憲法の要請するところである。」(判例時報2178号12頁―下線は竹中が追加)。なお、憲法科目受講生は、下線部分と憲法教科書の国民主権・選挙権・投票権・国民の地位論・有権者団(選挙人団)論・選挙権の性格に関する権利公務二元説に関する記述との異同について、検討してみて下さい。
3=憲法判例の「判決文の全体構造・骨組み・全体の論理構造」を理解する学習の重要性
  司法試験員会が(法務省HPで)公表している「司法試験の出題趣旨と採点実感」は、法科大学院生にとっての必読の文献である。そこでは、法律実務家を目指すものとして(司法試験法1条、3条2項4項参照)、<「重要な最高裁判例を踏まえた上で、与えられた事例に即した個別的・具体的検討」を行う答案作成の必要性>が繰り返し説かれている。受講生は、最高裁大法廷判決(違憲判決・合憲判決)などの重要な憲法判例については、(判例百選の抜粋部分のみではなく)判決文全体を判例時報などで読んでおく必要があろう。その際、判決文をナンバリング(判決文の第1、1(1)アイウなど)に沿って項目ごとに見出し・要約を付し、判決全体の構造・骨組みを把握する作業を行っておく必要があろう(そして、憲法教科書や判例百選などで抜粋されている憲法判断部分は判決文の全体構造の中のどの箇所で述べられたものであるかを確認する作業を行っておくべきである)。
4=法科大学院の教育の質の向上・司法試験合格率の向上の重要性と憲法学
  本法科大学院は開設以来、国民の一人ひとりの具体的人生に思いを馳せることのできる想像力・精神・情熱(パッション)と高度の専門的知識(リーガルスキル)・国際性とをあわせ持つ法的専門家(=21世紀の日本社会・世界において求められる法曹)の養成に日々努力を傾注してきている。教育の質・司法試験合格率の向上という喫緊の重要課題も、国民のための司法の実現・国民の生活に密着した憲法学の実現というより大きな目標のもとにある。

 

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