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教員からのメッセージ


木下 孝治 教授
法科大学院で商法を学ぶ
 法科大学院が発足した2004年から2005年にかけて、当時は、司法試験の形も見えず、学生も教員も手探りで勉強していた。会社法の制定前後だったこともあり、真新しい条文で迷子になっていないか、規則に潜む規律を見落として足元をすくわれていないか、前の条文から変更された文言は何を意味するか、勉強会に呼ばれては互いに膝つき合わせ、刊行直後の会社法条文集と首っ引きであった。条文重視の学習法は、会社法が社会に定着し、良くも悪くも活用されている今日でも、変わらない。
 そんな苦労を共にして、2006年に法科大学院を最初に修了し、法曹となった人たちは、今春、実務に入って5度目の春を迎えたことになる。その後も、銀行法務を学んでから見直すと、会社法も民法もわかるようになった等と感想をくれた受講者にも出会うことがある。それは大胆なコメントだね、まだ怖さを知らないね、と内心案じているのだが、そんな彼らも見事に一発合格を果たし、弁護士を立派に務めている。
 営利組織の私法関係を規律する会社法は、内部的意思決定と対外的権限の分配と手続のルールを中心に学ぶのだが、設立、株式、新株予約権、社債、計算、組織再編と、資金の流れや、拠出された資金の性質を考えながら意思決定がなされる場面が多い。ところが、不幸なことに、会社法の論点だけを学んでも、企業の金銭感覚は思うようには培われない。そのことは私自身の学習・研究上も、日夜痛感してきた。会社法と並んで銀行取引や保険を併せて教えることのメリットを、今後も大切にしていきたい。
 私の東京出張の折に、大阪で会合の後に、年の近い私を飲み仲間に選んでくれる彼らは、共に学んだことを実地で使ったと、守秘義務を遵守しつつ短報をくれる。
 「閉鎖会社の社長は会社法を知らなくて、教えて差し上げるのが大変です。」「先週はM&A絡みでデュー・ディリジェンスに入ってきました。」「債務者に会社分割を使われて、目眩ましにあった顧客の代理人になったので、ただ今反撃中です。」「信託を組み込んだ投資スキームを扱いそうです。」「震災関連で保険のことを調べています。」
 狭い世界の付き合いなので、どこで利益相反が生じるかもしれず、こちらも用心し、コメントもせず腹の中に収めるのだが、在学中に仕込んでおいた「飯の種」を見事に花開かせてくれることは、日々の苦労が報われる思いがし、何より嬉しく思われる。

 

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